みヅゑ…

流転の好事家あたしかの公開備忘録

福岡佑梨「回响─ひびくもの─」展

 ギャラリー崇仁で9月14日から始まった(〜9月29日)福岡佑梨「回响─ひびくもの─」展。主に関西で陶作品を作っている福岡佑梨(1987〜)女史の個展。個人的には福岡女史といいますと、紙の上に青い釉薬をぶっかけ、そこに極薄の陶片を散りばめていくというインスタレーション作品──つまり陶芸一般における陶と釉薬の関係が逆転しているわけですね──にギャラリー白で接したことがあり、とても印象に残ったものですが、その後海外での滞在制作が続いていたこともあって、すっかりご無沙汰だったもので(と思ってたら今春福住画廊で個展をしていたという(爆))。

 

 さておき今回は極薄な陶土で円錐状のオブジェを作り、それが展示空間内に大量に散乱している、という作品でした。ところどころに密になっているところもあって、花束のようでもあり巻貝の群れのようでもありという趣を見せていたわけですが、一見すると紙で作ったオブジェによるインスタレーションにしか見えないこれらが全て陶であるわけですから、その労力たるやハンパない。福岡女史いわく、このように成形して焼いて形になるように作れるまで1年以上かかったそうですから、余計です。

 

 一般論として陶芸に限らず工芸全般に言えることですが、機能のみならず言説における「主題」や「作者の伝えたいこと」──言い換えるなら作者それ自体ということなのですが──が素材に従うという傾向がありますが、福岡女史の作品はそのような視角から見た場合、紙のようにしか見えないという外見(や、あるいは初期作品における陶と釉薬の関係性を顚倒させること)を鑑みるに、かように素材に従属することからはとりあえず脱することができていたように見えます。もちろん今後どうなるかは分からないですし、彼女が陶芸に対していかなる考えを持っているか訊きそびれたのでアレですが。

 

 ともあれ、近年、工芸ないし工芸と現代美術との接点においてかかる「言説や作者は素材に従う」という傾向から微妙に離れた作品が出始めている中、今から見ると福岡女史はそのアーリースターターだったのではないか感があり、そういう観点から見ても興味深いところ。29日まで。